2007/12/28

つよいもの、よわいもの。

空を轟音をひびかせて飛行機が過ぎてゆく。
ダディもママンもわたしも、
寺の山門からそれを見上げる

黒仁王が有名な成田空港近くのお寺に来た話だ。
青空のあたたかい一日をドライブで過ごす。
目的はママンが決めた。
・・・「はにわ」だ。

はにわ博物館なるところに行きたいらしい。
芝山という地名をたよりに、
あまり当てにならないカーナビの案内でここまで来た。

寺の中に併設している博物館は薄暗く、静か。
半地下の1階のショーケースに褐色のはにわが並ぶ。
空洞の目とうすく開いた口。
みつめているとこれなら魂も宿りやすいだろうと思った。
はたして掘り出して好いものなのかと、
ちょっとためらいながらスケッチする。

もし私が古代に生まれていたら、
はにわや土偶をつくって生活したい。
狩猟や耕作は向いてない気がする。
へたくそな粘土細工でも、
黒曜石のかけらくらいになら交換してもらえるだろう。

・・・なんてまったく時代考証を無視した発想が浮かぶ。
でもなんか楽しいでしょ、
そう考えた方が。

ママンは真剣にはにわのカケラを見つめ、
その作り方や成り立ちが書いてあるパネルを見つめる。
ダディは・・・元気ない。
(得意分野ではないのだな。)


寺の参拝を先にすませたので、
今度は境内の三重塔を見に出る。
また飛行機が通り過ぎる。
あたりの家が無人になってい原因はこれかもしれない。

三重塔の梁に彫られた龍や象を見ながら、
不思議な空想をしてしまう。
ほんとうに龍が雲のなかから何匹も飛び出して、
現世のわたしたちを迎えにきてくれるのだ。
・・・・また飛行機だ。


さんざん飛行機を見たのに、
次の目的地は航空博物館だ。
巨大エンジンを見てダディが生き返る!
(このひとは工学部だ。)

ゼロ戦の模型を見たり、
展示されているコクピットに乗り込んで、
松本零士の漫画に出てくる世界をちょっと味わう。
弟が貸してくれた漫画は戦争モノだった。
空を飛ぶことと戦争が切り離せない世界は哀しいな・・・と
操縦桿にさわりながらふと思う。

館内の階段を最後まで登りきると丸い展望台。
途中のレストランが閉まっているのに涙しながら、
トワイライト・ゾーンの薄紫を眺める。
なんか切ない。
せめてコーヒーセットくらいにはありつけると思っていたのに。


ママンがこの日ひどくマジメに、
「飛行機の出現で人間は崇拝するべきものを見下ろしてしまった。」
と言った。

物質文明の子、われら。
いつか裸足で地を這う営みに戻るかもしれないけど、
一回だけでも神様を否定した。
コドモが親を乗り越えるつもりで。
神様がわたしたちをどう思ってるかは知らない。

マジメにそんなことを考えているのに
やっぱりひもじくなると悲しくなるわたしは
「うなぎが食べたい・・・」
とつぶやき、
ママンに冷めた目で見られたのであった。

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