2008/07/04

桃の実とセンチメンタル。

また桃の季節がきた。
祖母の残した庭でまるで約束されたかのごとく実がなる。
袋がけしていない実はさっそく虫食いが。
ダディが休みに必死でかぶせた白い袋のなかは、
きっとわずかに色づいてきているはず。

食意地のはっていた彼女の植えた庭木は、
ブルーベリー、枇杷、桃、柿、梅・・・と
食べれるものばかり。
6月にはママンが悲鳴をあげながら
梅干し、ジャム、焼酎付けと大量の梅をさばいていた。

その分、桃は好い。
皮をむいて食べられるから楽である。
おばあちゃんの桃は太陽の味がする。
ちょっと青かったり痛んでいたりするけれど、
甘くて少し切ない。

おばあちゃんは植物を育てるのが好きだった。
すみれとかネジレ草とか野の花でもスコップで掘っては
庭に植え替えて楽しんでいた。

「花ドロボウは罪にならないとい言ってねえ・・・。」
とか言い訳して夜中にこっそり採りに行っちゃうのだ。
子ども心にそれはまずいんじゃないかと思っていた。
よそ様のお宅の塀のぎりぎり外にあるすみれとか、
たぶん種が風にのってアスファルトの割れ目に飛んできた花とか。

晩年病気で呆けてしまい子どもみたいになってしまったとき、
ちょっとショックだった。

大学から帰ってきて夕飯をわたしが作っていると、
「お菓子を買いに行きたい。」
とよくねだられ、
一緒に近所のコンビニへ歩いていった。
足が動かないのでゆっくりゆっくり、
信号が赤に変わっても横断歩道を渡りきれない。

思い返せば子ども時代に
病気ばかりしていたわたしのランドセルを持って
学校までついて来てくれていた元気な頃もあったのに。

計算、書道、手芸、何をやらせても優秀、
よく気のきくかわいいひとだったけれど
5歳になっても読み書きのできないわたしの将来をかなり心配して
いろいろ気をもんでいた。
絵が描けると知ると大喜びで、
わたしの手製の誕生カードをいつまでも大事にとっていてくれた。

桃を食べながら泣けてくるのは好くないクセだが、
秋になる柿を口にしてもちっとも悲しくならないのだ。
不思議なものだが・・・・。
桃は、きっとおばあちゃんからのお中元なのだ。

桃の実やひと刷け染まりて夏来る

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